【当事者のリアル】氷河期世代は本当に全員悲惨なのか?「甘え論」の裏にある歪んだ構造

雑記

「理不尽な不合格」

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「就職氷河期(ロスジェネ)世代」とネットで検索すると、そこには極端な二つの論調が渦巻いています。

「全員が生活に困窮していて救済が必要だ」という悲惨な意見がある一方で、「リスキリングしなかった自己責任だ」「単なる努力不足、甘えだ」という冷酷な声。

1981年生まれ、まさに氷河期ど真ん中の採用サバイバルを生き抜き、子会社の最年少管理職から本社の一般職までを経験してきた当事者の私から言わせれば、「どちらの意見も、現場の多面的な実態を全く捉えていない」というのが結論です。

まずは「氷河期世代の今ってぶっちゃけどうなの?」という疑問に直球で答えるべく、私の周囲の環境と、当時の異常な構造の数字を突き合わせながら、世間のイメージを覆す「本当の姿」を分かりやすく解説します。

1. 【現実】実は「生活に困窮している人」はマイノリティという事実

まず、世間の「氷河期=全員悲惨」という記号的なイメージに対する、私の身の回りのリアルなデータを共有します。私の会社の同僚や知人に、現在の年収を聞いてみました。

📊 表1:私の周囲の氷河期世代・現在のリアルな年収一覧

年齢・立場 学歴 現在の年収(額面) 当時の就活エピソード
55歳(一般職) 中堅大卒 800万円 「5社くらい受けて、苦労した記憶はないな」
50歳(管理職) MARCH卒 1,200万円 「10社くらい受けて、何社か内定が出たよ」
45歳(一般職・筆者) 中堅大卒 880万円 20代は年収350万で月300時間労働。のちに最年少管理職へ
45歳(役員) ハーバード卒 4,000万円超 「『来てくれ』と言われて入社し、その後独立した」

現在の日本の平均年収と比較しても、私の周囲の氷河期世代は、世代平均を大きく超えて安定した生活水準を維持しています。

いまのZ世代や若い世代の周りにいる40代〜50代(上司や親)も、こうした「うまく乗り越えた人たち」が多いのではないでしょうか。だからこそ、若い世代や外野の人たちから見れば、「氷河期って言っても、普通にみんな良い給料もらって生活できてるじゃん。今さら被害者面して騒ぐのは甘えでは?」という「自業自得論」が出てくるのも、心理としては理解できます。

実際、氷河期世代で本当に明日の生活に困窮しているレベルの人は、全体で見ればマイノリティ(少数派)なのだと思います。

2. 個人の努力を無効化する「2大ルート強制分岐」の構造

では、なぜネットではあれほど「悲惨だ」「救済が必要だ」と騒がれるのか。

それは当時の就職環境が、個人の実力や努力とは無関係に、「入社時の運」だけでその後の人生を決定づける「残酷な2つのルート」を強制的に生み出したからです。

当時の有効求人倍率は、一番酷い時期で0.54倍〜0.83倍。今の求人倍率と比較すると、まさに「座れる椅子が最初から足りない」異常な超買い手市場でした。この構造によって、若者は強制的に「2つのルート」へ振り分けられました。

① 非正規ルート(約3割)を待っていた「キャリアのロック」

当時、やむを得ず派遣や非正規を選んだ人たちは、企業から徹底的に「現状維持のための消耗品(パーツ)」として扱われました。

のちに私が子会社の管理職として採用を担当したからこそ分かりますが、当時の非正規雇用の求人の目的は、ほぼすべてが「産休中社員の1年間の穴埋め」といった、単純な人的資本の補充でした。そのため、任せるのはテンキーを叩くだけの事務作業。スキルなんて身につくはずがありません。

中には「自作PCを組める」「VBAやSQLを理解している」といった、現代なら即戦力として高待遇で迎えられるような、バグレベルに優秀な人材も応募してきました。しかし、企業側の本音は「そんな高度なスキルはぶっちゃけいらない。変に詳しくて業務の非効率さを指摘してくる奴より、何も知らずにただ指示通りに動き、おじさん社員の雑談相手になってくれる人の方が都合が良い」という、絶望的なまでの低スペック最適化が行われていたのです。

そして、1年の産休期間が終われば「放流」。キャリアもスキルも何も残らないまま、また次の現場へ渡り鳥のように移るしかない。さらに、当時の企業には明確な「年齢と性別の壁」がありました。

  • 男性の派遣:「年齢が上がると単価(時給)が高くなるからいらない」
  • 女性の派遣:「28歳を超えると結婚や妊娠でいなくなるからいらない。産休に入られたら困る」

結果として、「30歳を超えたら男女とも派遣としての雇用すら一気に厳しくなる」という罠が存在したのです。これが、個人のリスキリングや努力云々では絶対に突破できなかった、「3割の非正規ルート」に埋もれたマイノリティのリアルです。

3. 「7割の正規」を待っていた、もう一つの生存デスマッチ

では、運よく正社員の席を勝ち取ったマジョリティ(7割)は無傷だったのかといえば、全くそんなことはありません。彼らを待っていたのは、圧倒的な買い手市場を背景に、企業側がやりたい放題の「超ブラック環境」でのサバイバルでした。

私も22歳から29歳までの間、年収は350万円前後。それでいて毎月の労働時間は300時間を軽く超えていました。

実質は22時過ぎまで残業し、帰宅は23時半。日曜日も出勤するのが当たり前。これだけ泥のように働いて、過酷な労働に対する対価は、たった3万円の「営業手当」のみ。残業代など1円も出ない環境を時給に換算すると、なんと「時給532.5円」になります。

週1回の貴重な休みすら会社のイベントで容赦なく消費されていく。「残業しないで帰ればよかったじゃないか」と言う人がいますが、現場が疲弊しきっている同調圧力のなかで、そんなことを突っぱねられる人なんて当時は誰もいませんでした。間違った行動に対して是正を求めれば、「出る杭はとことん叩かれた」時代だったのです。

頑張れば頑張るほど自分を追い詰めて脱落していく同僚を、私は数え切れないくらい見てきました。今のマジョリティ(年収800万〜1200万)の人たちは、この「時給532円のサバイバルデスマッチ」を、バグのような確率とタフさで生き残り、当時の数%の成功席を掴み取った「猛者たち」なのです。

4. 「全員が悲惨ではない」という言葉の裏にある、本当の地獄

つまり、「氷河期世代は全員が悲惨ではない(普通に暮らしているマジョリティも多い)」というのは紛れもない事実です。しかし、だからといって「じゃあ落ちこぼれた奴らは自己責任だ」と片付けるのは、あまりにもこの世代が通ってきた歴史の残酷さを無視しています。実は、この激動を生き抜いてきたマジョリティの40代〜50代の中にも、「別の形の地獄」が今なお続いています。

アホみたいに落され続けた氷河期世代は、「就職活動」や「評価されること」に対して、必要以上に強烈なネガティブトラウマを抱えています。40代後半になり、会社に対してどれだけ理不尽な要求をされても、心の底にある就活トラウマが自動ブレーキをかけます。

「ここで文句を言ってクビになったら、もうあの地獄の就活をやり直さなきゃいけない。40代後半の氷河期なんて、どうせ転職市場に需要はない。だったら、どれだけ理不尽でも我慢すればいいや……」

企業の上層部や経営陣も、それを見透かしています。「氷河期の連中は、どうせ会社を辞めないから、一番使いやすくて都合がいいんだよ」と。

こうして、企業から「辞めない駒」としてぞんざいに扱われ、労働者側も「我慢すればいいや」と諦める。結果として、社内の仕事は限定的になり、管理職が求めるクオリティなんてほぼ達成できない。だから、一部のちょっと仕事ができる優秀な人間にだけ異常な量の仕事が集中する。今の日本の会社の本社には、こんな「クソみたいな膠着状態の現状」が蔓延しているのです。

📢 第1回のまとめ:私たちが目を向けるべき「歪み」

最近の就活市場では、「新人の初任給30万円」というニュースが飛び交っています。新人を30万で必死に囲い込む一方で、企業は「50代の氷河期世代はいらない」と平気で切り捨てる。人を資産として見ず、その時々の市場の需給だけで買い叩いたり、高値で掴んだりする企業の冷酷な本質は、実は氷河期から何も変わっていません。

表面の「うまく乗り越えたマジョリティ」の姿だけを見て、「自己責任」と片付けてしまう社会はあまりにも浅はかです。彼らもまた、心に深いトラウマを抱え、企業に都合よく使われている生存者なのです。

では、なぜ企業はこれほどまでに「人材」という資産を軽んじるようになってしまったのか?

次回、【第2回:闇と告発編】「お前の代わりはいくらでもいる」採用経験者が語る、企業が人材をドブに捨てた時代では、私が実際に目撃した「使う側の論理」と、現代に返ってきたブーメランのツケについて、さらに深く切り込みます。

(第2回へ続く)

👉 続く第2回では、「お前の代わりはいくらでもいる」と人を使い捨て続けた企業の闇と、現代を襲う人手不足の因果応報を暴きます。

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